「先週まで元気にインタビューを受けていたのに、なぜ突然亡くなってしまったのか?」という疑問を抱く人は少なくありません。その答えを握る医学的キーワードが「急性増悪(きゅうせいぞうあく)」です。
通常、間質性肺炎は数ヶ月から数年という時間をかけてじわじわと肺の壁が厚くなり、酸素を取り込む能力が落ちていく慢性の経過をたどります。しかし、何らかの引き金をきっかけに、肺全体に急激かつ広範な炎症と線維化の嵐が吹き荒れる現象が起こります。日本呼吸器学会のガイドラインでも、急性増悪は「1か月以内の急激な呼吸不全の進行と、画像上での広範な浸潤影の出現」と定義され、発症後の死亡率は30〜50%に達すると報告されています。
急性増悪を引き起こす決定的な理由として、以下の要因が判明しています。
- 風邪やインフルエンザなどのウイルス・細菌感染:軽微な呼吸器感染症が引き金となり、免疫系が暴走して肺組織を一気に攻撃する。
- 微小な誤嚥(ごえん)や胃食道逆流:就寝中などに唾液や胃酸が気道に入ることで、過敏になっている間質に致命的な刺激を与える。
- 過労・極度の肉体的ストレス:芸能活動や過密スケジュールによる免疫バランスの乱れがトリガーとなる。
- 明らかな誘因のない特発的悪化:外的な原因が一切見当たらないにもかかわらず、突然スイッチが入ったように劇症化するケースも全体の半数近くを占める。
急性増悪が起きると、高流量の酸素投与を行っても血液中の酸素飽和度(SpO2)が維持できなくなり、短期間で人工呼吸器やECMO(体外式膜型人工肺)を要する危険水域へと突入します。著名人の訃報が「急死」として報じられる最大の病理学的背景は、この容赦ない急性増悪にあります。