「負けは弱さの証明ですか? 君たちにとって負けは試練ではないのですか?」――インターハイ予選で青葉城西に敗れた直後、うなだれる部員たちに武田が投げかけたこの言葉は、作品屈指の名言として語り継がれている。このアフレコ現場で、神谷は一語一語のニュアンスに徹底的にこだわったという。感情を叫び散らすのではなく、噛み締めるように発せられた声調。そこに宿っていたのは、声優業界の第一線で戦い続けてきた彼自身のプロフェッショナルな哲学だった。
現場のマイク前で神谷は、若い声優陣が放つ生のエネルギーを受け止めつつ、作品全体を包み込む「重石」としての役割を意識していたと明かす。過剰な演出を削ぎ落とし、言葉の重みそのものを届ける。そのストイックな姿勢こそが、幾度観返しても色褪せない名シーンを生み出した原動力だ。