この認知的制約の生々しさは、近年映像の世界でも極めて正確に描写されている。世界的な評価を受けた『パラサイト 半地下の家族』や是枝裕和監督の『万引き家族』が描き出したのは、単なる悪人や愚者ではない。追い詰められた環境の中で、目の前の生活を維持するために合理的思考の幅を削ぎ落とされていく人間のリアルな心理描写だ。
現在、Netflixで配信されている貧困問題を追った作品群や、NHKオンデマンドで視聴可能な社会派ドキュメンタリーでも、同じ構造が繰り返し報告されている。日々の食費や家賃の工面に追われるシングルマザーや若年層が、将来への投資やキャリア形成といった「一歩先」の計画を立てる余裕を奪われていく姿は、まさに現代社会におけるスケアシティ・エフェクトの縮図と言える。