ゆりかごや内密出産によって託された子どもたちは、その後どのような人生を歩むのか。病院で初期医療を受けた乳幼児は、児童相談所を通じて乳児院などの施設に保護され、その後、里親への委託や特別養子縁組によって新たな家庭へと迎えられる道が模索される。
ここで重い課題として立ち現れるのが、成長した子どもが直面する「出自を知る権利」の問題だ。「自分はどこから来たのか」「なぜ手放されたのか」という根源的な問いは、思春期以降の自己形成に決定的な影響を与える。内密出産では、母親の同意が得られた場合に限り、一定の年齢に達した子どもへ身元情報を開示するシステムが病院独自で構築されているが、法的な裏付けが弱いため、情報の永久保存や管理の厳格性には限界がつきまとう。
さらに、日本の児童福祉全体が抱える構造的課題も影を落とす。施設養育から家庭養育への移行が掲げられて久しいが、里親の登録数不足や支援体制の未成熟さは依然として深刻だ。救われた命が、温かな家庭環境の中で自己の尊厳を保ちながら育つための社会的基盤は、いまだ十分とは言い難い。