SNSや大手Q&Aサイト、着付け教室の相談窓口で頻繁に交わされる「失敗の告白」を調査すると、自己流の管理による悲痛な声が多数浮き彫りになります。
「成人式の前撮りから本番までの2ヶ月間、衿芯を入れたまま桐箪笥の引き出しにしまっていたら、衿芯がくの字に曲がり、当日の朝に着付け師から『これでは衿元が決まらない』と芯の買い直しを求められた」(20代女性の投稿)という実例は典型です。また、「脱いだ後の汗を飛ばそうと、着物用ハンガーに3週間吊るしっぱなしにした結果、身頃の重みで衿肩まわりが伸びきり、身丈が2cm以上狂ってしまった」という深刻な型崩れ被害も報告されています。
着物のお手入れ専門店を営むベテラン悉皆職人は、取材に対して次のように現場の実情を明かしています。「丸洗いでお預かりする長襦袢の中で、もっとも手強いのは汚れではなく、無理に畳まれて繊維の奥まで定着した『強いテカリと不自然な折りジワ』です。正絹は水分と圧力によって分子結合が固定される性質があります。汗を含んだ湿気のある状態のまま、雑に折って上から重い着物を重ねてしまうと、プロのプレス機を使ってもシワを完全に消し去ることは極めて困難になります。」
現場のリアルな証言が物語るのは、脱いだ後の「数時間の陰干し(湿気抜き)」と「正しい折り目に沿った畳み方」を行わない限り、高価な長襦袢であってもわずか数回で着姿を損なう消耗品へと成り下がってしまうという冷酷な事実です。