長年の事実婚状態を続けていた藤間紫と三代目市川猿之助が、ついに正式な婚姻届を提出したのは2000年(平成12年)のことでした。当時、藤間紫は76歳、猿之助は60歳。最初に出会ってから実に半世紀近くの歳月が流れていました。世間はかつて「略奪愛」と批判した2人の絆を、もはや誰も否定できない「究極の純愛」として温かい拍手で祝福しました。
晩年も舞台への情熱は衰えず、紫派藤間流の指導と舞台出演を精力的に続けていましたが、2000年代後半になると徐々に体調を崩しがちになります。そして2009年(平成21年)3月27日、都内の病院にて肝不全のため85歳で永眠しました。最期は最愛の夫である猿之助(猿翁)に手を握られ、穏やかに息を引き取ったと伝えられています。
妻の死に直面した猿之助の落胆は計り知れず、後に自身も脳梗塞などで闘病生活を送ることとなりましたが、2026年に83歳で世を去るまで、紫への思慕の念が消えることはありませんでした。彼女の命がけの愛と芸への執念は、夫・猿翁の偉業を支え、そして今、孫の三代目藤間紫(爽子)へと脈々と受け継がれ、新しい時代の中で眩い輝きを放ち続けています。