藤原氏の演技の到達点として今なお語り継がれるのが、『映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』だ。自分自身がロボットであると思い込まされたひろしと、本物のひろしが対峙するクライマックスシーン。家族を守るためにボロボロになりながら叫ぶ「俺の家族を取り戻すんだ!」という一言には、観客全員の涙を誘う圧倒的な熱量が込められていた。
原作者である臼井儀人氏が描いた漫画の世界観から飛び出し、日本のファミリーアニメの象徴へと昇華した野原ひろし。足が臭く、会社の給料は上がらず、お小遣い制に頭を悩ませる「しがないサラリーマン」。しかし家族の危機には命を張る。その泥臭いかっこよさは、藤原啓治という役者の魂が吹き込まれたからこそ成立した奇跡だった。