「犬も歩けば棒に当たるの意味は、幸運と災難のどっちが正しいのか」という疑問に対し、国語辞典や学術的な見地から下される判定は明確です。本来の歴史的な意味は「何かをしようとすると災難に遭うこと」であり、幸運を指す用法は近代以降に派生した比較的新しい解釈に過ぎません。
しかし、現代の辞書事情を精査すると、驚くべき変化が起きています。『広辞苑』(第7版)や『明鏡国語辞典』(第3版)をはじめとする主要な中型国語辞典の多くは、現在では両方の意味を掲載しています。多くの場合、第一義に「災難に遭うこと」、第二義に「幸運に出会うこと」を併記し、注記として「近年は良い意味で使われることが多い」と補足を加えています。
言葉の意味をわかりやすく整理すると、両者の違いは「棒」の捉え方に集約されます。
- 本来の意味(悪い意味・災難):出しゃばったり余計な行動をしたりすると、犬が棒で打たれるようなひどい目に遭うという「自戒・教訓」。
- 派生した意味(良い意味・幸運):じっとしていないで外に出て行動を起こせば、思いがけない掘り出し物やラッキーな巡り合わせに遭遇するという「行動のススメ」。
どちらか一方のみを「間違い」と一刀両断するのは、生きた言葉を扱う現代社会ではリスクを伴います。歴史的正統性は「災難」に軍配が上がりますが、日常会話やビジネスの実践においては「思わぬ幸運」としての認知が強固に定着しているのが偽らざる現状です。