大家側が増額を求めて裁判を起こした場合、裁判所はどのような基準で判断を下すのでしょうか。実務上、裁判所は直ちに裁判官独自の判断で決めるのではなく、専門家である不動産鑑定士に「賃料鑑定」を嘱託します。ここで算出されるのが相当賃料と不動産鑑定評価です。
賃料鑑定では主に以下の4つの手法を組み合わせて「適正な継続賃料」が算出されます。
- 差額配分法:現行賃料と対象不動産の現在の新規適正賃料との差額を求め、その差額のうち賃貸人に帰属すべき部分を現行賃料に加減する方法。
- 利回り法:不動産の基礎価格に期待利回りを乗じ、必要諸経費(公租公課、減価償却費、維持管理費等)を加算する方法。
- スライド法:現行賃料を取り決めた時点からの物価指数や地価変動率を乗じて改定賃料を求める方法。
- 賃貸事例比較法:近隣の類似物件における継続賃料の改定事例を収集し、個別格差を補正する方法。
一般に市場で新規に募集されている家賃(新規賃料)が大きく跳ね上がっていたとしても、すでに居住している借主に対する家賃(継続賃料)の増額幅は、過去の家賃増額請求の判例と相場において極めて抑制的に判断される傾向があります。大家側が「周辺相場が20%上がったから家賃も20%(月2万円)上げる」と主張しても、裁判で認められるのは数千円程度(3%〜5%前後)の増額にとどまる事例が多数を占めます。