なぜ声優の多くはこれほど稼ぎにくいのか。その根幹にあるのが、業界の長年の慣習である日本俳優連合(日俳連)と制作サイド(日本音声製作者連盟)による出演協約です。
日本国内で制作される商業アニメーションの出演料は、基本的にこの協約に基づく「ランク制」で決められています。芸歴、知名度、実力に応じて「15ランク(1万5,000円)」から「45ランク(4万5,000円)」、そして上限のない「ノーランク」へと階段を上がっていく仕組みです。
このシステムのなかで最大の論点となっているのが、養成所やオーディションを経て事務所預かり・準所属となった新人に適用される「ジュニアランク(3年間固定)」の規定です。
- アニメ1本(30分番組)の出演ギャラ:一律1万5,000円
- 台詞の量に関係なく均一:主人公を演じて数百ワードを叫ぼうが、通行人のガヤ数行だろうが同一金額
- 二次利用料(転載・配信等):基本ギャラの一定割合(70〜80%加算)が上乗せされるものの、ベースが低いため微増にとどまる
さらに見過ごせないのが「声優 事務所 取り分」の存在です。声優が受け取るギャラから、マネジメント手数料として事務所が約20%〜30%を差し引き、そこから源泉徴収税(約10.21%)が引かれます。結果として、新人がアニメ1本のアフレコを終えて手元に残る手取り額は1万円前後に過ぎません。1クールの主役に抜擢され、全12話すべてに出演したとしても、3ヶ月間で手にするアニメ本編のギャラは手取り12万〜15万円程度です。これだけで都内の生活費を賄うことが構造的に不可能であることは明白です。