日本国内の興行収入が255億円を突破し、歴代興行収入ランキングでも屈指の座に君臨する『アナと雪の女王』。その立役者となったのが、エルサの日本語吹き替えを担当した松たか子です。公開当時、劇中歌「レット・イット・ゴー〜ありのままで〜」のサビで見せた伸びやかなハイトーンボイスは、従来のディズニーアニメーションの枠を遥かに超え、老若男女の心を鷲掴みにしました。
特筆すべきは、エルサの歌声も吹き替え本人である松たか子自身が全編歌い上げている点です。海外アニメーションのローカライズでは、台詞を担当する役者と高度な歌唱パートを担当するボーカリストを分ける手法が珍しくありません。しかし、ディズニー側は感情の連続性を最重要視し、同一キャストによる表現を求めました。
当時の制作特番や公式発表資料によると、エルサ役のオーディション経緯は極めて厳格を極めました。候補者の音声サンプルは本国アメリカのウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオへ送られ、エグゼクティブ陣によるブラインド審査が実施されたといいます。松たか子の声が持つ「王家の気品」「繊細な心の揺らぎ」、そして「感情の爆発を支える圧倒的な歌唱力」が本国ディレクター陣の満場一致の評価を獲得し、大役の座を射止めました。
音楽関係者やボイストレーナーの間でも、松たか子の発声技術は極めて高く評価されています。舞台演劇の第一線で培われた揺るぎない体幹と呼吸法に裏打ちされたミックスボイスは、芯の強さと透明感を両立しており、孤独に震えるエルサの内面を見事に具現化していました。