SNSや大手Q&Aサイト、愛犬家コミュニティには、足舐めの深刻化に苦悩する飼い主の切実な声が数多く寄せられています。「最初はたまに手をペロペロしている程度だったのに、ある朝起きたら前足の毛が円形に抜け落ち、皮膚が真っ赤にただれて血が滲んでいた」「怒ってやめさせようとしたら、家族の目が届かないケージの奥や留守番中に激しく舐め壊すようになった」といった体験談は後を絶ちません。
臨床の現場でも、この「舐め壊しのスパイラル」は非常に厄介な病態として認知されています。犬の舌はヤスリのようにザラザラしており、皮膚の角質層を削り取る強い物理的刺激を与えます。角質層が傷つくことで皮膚のバリアが失われ、そこへ唾液中の水分が滞留することで、高温多湿を好むマラセチア酵母菌や黄色ブドウ球菌が爆発的に繁殖します。感染が起きると激しい痒みと熱感が生じ、犬はその不快感を紛らわせるためにさらに強く患部を舐め続けるという、出口のない悪循環に嵌まり込んでしまうのです。初期段階で専門的な介入を行わなければ、組織が硬化して「肢端舐性皮膚炎(したんしせいひふえん)」と呼ばれる極めて治りにくい肉芽腫へと変貌を遂げます。