「払った家賃は少しでも多く経費にしたい」と考えるのは経営者として自然な心理です。しかし、目先の節税メリットに気を取られるあまり、より大きな経済的損失を被るケースが後を絶ちません。最大のリスク要因は、持ち家で住宅ローンを返済している個人事業主における「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」とのトレードオフです。
税法上、住宅ローン控除を全額適用するためには、床面積の50%以上を居住用として利用していなければなりません。もし「節税になるから」と自宅の事業割合を50%超に設定してしまうと、住宅ローン控除の適用資格そのものを完全に喪失します。所得税額から直接差し引かれる税額控除の恩恵を失う打撃は、経費算入によるわずかな所得圧縮効果を容易に吹き飛ばしてしまいます。事業割合が10%以下であれば住宅ローン控除を全額受けられ、10%超50%以下であれば按分適用となるため、シミュレーションを怠ってはなりません。
【経費計上を積極的に進めるべき人】
- 事業専用の独立した事務所・作業場・倉庫を賃借している事業者
- 自宅兼オフィスで、独立した執務室が存在し、間取り図上で面積を明確に証明できる人
- すでに住宅ローンの返済を終えているか、賃貸物件に住んでいるフリーランス
【按分比率の算定に慎重になるべき人】
- 現行で住宅ローン控除を上限近くまで受けている人
- ワンルームマンションで生活空間と作業スペースが混在している人
- 親族所有の物件を相場より著しく安価または無償で借りている人(みなし課税のリスク)