海綿体とは、無数の小さな小室(海綿体小柱と類洞)が網目状に張り巡らされた、スポンジのような弾力性を持つ血管組織です。その内部は内皮細胞と平滑筋で構成されており、自律神経の働きによって血管の収縮と拡張を精密にコントロールしています。肉眼的には筋肉のように感じられるかもしれませんが、自発的に動かすことのできる骨格筋とは全く異なる構造です。
男性器には性質と役割の異なる2種類の海綿体が存在します。それぞれの特徴を整理すると、形状維持と機能の巧みな分担が見えてきます。
- 陰茎海綿体(いんけいかいめんたい):男性器の背側に左右一対(計2本)並んで位置する主幹組織。強靭な「白膜(はくまく)」というコラーゲン繊維の膜に包まれており、内部に大量の血液を閉じ込めることで、性交に必要な「剛直さ(硬度)」を生み出します。
- 尿道海綿体(にょうどうかいめんたい):陰茎海綿体の腹側(下側)に位置し、中央を通る尿道を保護するように取り囲む単一の組織。先端部分は傘のように広がり「亀頭」を形成します。射精時に尿道が押し潰されないよう、勃起時も陰茎海綿体ほど硬くならず、クッションのような柔軟性を保つ特性を持ちます。
この二重構造があるからこそ、硬さを維持しながら精液をスムーズに射出するという複雑な生殖機能が成立しています。白膜の強靭さと類洞の柔軟性が共存する海綿体の組織構造こそが、男性器特有の柔軟性と剛直性を両立させている基盤です。
なお、海綿体は男性特有の器官ではありません。女性の解剖構造においても、陰核(クリトリス)の深部には左右一対の「陰核海綿体」が走り、膣口の周囲には「前庭球」と呼ばれる女性の海綿体の役割を果たす組織が存在します。性的興奮に伴って血液が充満し、充血・膨張して感度を高めるメカニズムは、男女で共通の発生学的ルーツを持っています。