ネット上の言説には、栄養素に対する過度な単純化が溢れています。その筆頭が「脂質はすべて太るから敵」「糖質さえゼロにすれば無制限に痩せる」という二大極論です。
第一の盲点は、脂質の『質』を無視した一括り論です。飽和脂肪酸の過剰摂取や、加工食品に多く含まれる酸化した油脂、トランス脂肪酸は確かに動脈硬化や慢性炎症を促進します。しかし、青魚に含まれるEPA・DHAや、アマニ油、エゴマ油などのオメガ3系多価不飽和脂肪酸は、むしろ脂肪燃焼を促す受容体を刺激し、代謝を高める働きが報告されています。良質な脂質は、削るのではなく「選んで摂る」のが現代の常識です。
第二の盲点は、糖質完全カットによる甲状腺機能と基礎代謝の低下です。糖質を長期間にわたり過剰に枯渇させると、体は生命維持の防衛反応として甲状腺ホルモン(活性型T3)の産生を落とし、省エネモードに移行します。いわゆる「代謝の飢餓適応」です。この状態に陥ると、食事量を減らしているにもかかわらず体重がピタリと動かなくなり、少し炭水化物を食べただけでリバウンドを起こす脆弱な体質が形成されてしまいます。
そして最も警戒すべき最大の肥満トリガーは、糖質単体でも脂質単体でもなく、「糖質+脂質」のハイパーコンビネーションです。ラーメン、ピザ、菓子パン、揚げ物丼のように、糖質と脂質が同時に高濃度で含まれる食事を口にすると、糖質によってインスリンが分泌された絶好のタイミングで、大量の脂質が体内に流れ込みます。これは生化学的に最も効率よく体脂肪を量産する最悪の組み合わせです。