「刺青を入れている者は日本の風呂に入れない」という言説は、国内外の旅行コミュニティで半ば定説のように語られてきました。しかし、タトゥー入浴拒否理由と真相を法的に分解すると、そこには明確な「法的区分の境界線」が存在します。
厚生労働省が所管する「公衆浴場法」第4条では、伝染性の疾病にかかっている者などを除き、原則として公衆浴場の営業者は入浴を拒否してはならないと定められています。地域住民の日常生活に不可欠な衛生施設として位置づけられる「一般公衆浴場(いわゆる町の銭湯)」は、タトゥーや刺青が入っていることのみを理由に入浴を拒絶することは法的に困難です。そのため、京都市内に現存する約90軒前後の銭湯の多くでは、刺青の有無にかかわらず日常的に受け入れが行われています。
これに対し、リゾートホテル、大型スパ、温泉旅館の大浴場などは「その他の公衆浴場」または「旅館業法」の管轄下、あるいは民間企業の営業施設として位置づけられます。これらの施設では、民法上の「契約自由の原則」および「施設管理権」に基づき、利用約款で「反社会的勢力の排除」や「他のお客様への不安感の防止」を目的として入浴制限を設けることが合法的に認められています。
ネット上で「京都の温泉で追い出された」という声が上がる背景には、法的性質が異なる「銭湯」と「レジャー型温泉施設」を混同したまま訪問し、施設管理権に基づく約款に抵触してしまったという現実のすれ違いがあります。一律に入浴が禁じられているわけではなく、施設の営業形態と法的枠組みによって対応が180度異なるというのが、取材を通じて浮き彫りになった決定的な事実です。