山門をくぐると空気が一変し、肌を刺すような引き締まった霊気に包まれます。薬王院が古来より「最強のパワースポット」と畏敬を集める最大の理由は、奈良時代の天平16年(744年)に行基菩薩によって開山され、南北朝時代に俊源大徳が山籠修行の末に感得した御本尊「飯縄大権現(いづなだいごんげん)」の存在にあります。
飯縄大権現は、不動明王の化身であり、白狐に乗り、背に烏天狗の翼を持ち、蛇を巻きつけた特異な尊容を誇ります。戦国武将の武田信玄や上杉謙信が兜の前立にその姿を刻んで戦勝を祈願したとされるほどの絶対的な「勝運・厄除け」の守護神です。薬王院の随所に祀られている大天狗・小天狗(烏天狗)は、この飯縄大権現に従う眷属(神仏の使者)であり、神通力をもって人々を災厄から救い、願いを成就させる存在として崇められてきました。
現地で語り継がれる天狗伝説は、単なる民話やおとぎ話ではありません。険しい峰々を駆け巡り、厳しい自然の中で荒行を重ねた修験者(山伏)たちの超人的な身体能力や薬草の知恵が、畏怖と感謝を込めて「天狗の仕業」として民衆に定着した歴史的実像が背景にあります。この修験のエネルギーが1200年間途切れることなく蓄積されていることこそが、高尾山薬王院のパワースポット効果の根底にある本質です。