ネット上で「不吉な前兆」として頻繁に画像がアップロードされる代表的な雲のパターンは、大気物理学の分類(十種雲形)で全て説明がつきます。それぞれの形状と、本来の気象学的メカニズムを解説します。
1. 肋骨状雲(ろっこつじょううん)の正体
魚の骨やあばら骨のように、等間隔の縞模様が平行に並ぶ雲です。「最も危険な地震雲」としてSNSで画像が拡散されやすい形状の筆頭ですが、正体は「波状雲(はじょううん)」と呼ばれるごくありふれた大気現象です。上空で異なる温度や湿度の空気層がぶつかり、大気の波(大気重力波)が発生した際、波の山部分で水分が凝結して雲になり、谷部分で蒸発して隙間ができることで美しい縞模様が形成されます。天気が下り坂に向かう前兆として高積雲や巻積雲によく見られます。
2. 放射状雲(ほうしゃじょううん)の正体
地平線の一点から空全体に向かって放射状に筋が広がっているように見える雲です。「震源地を指し示している」とデマが飛び交う典型例ですが、これは遠近感(透視図法の効果)による視覚の錯覚です。上空の強いジェット気流に沿って平行に流れている巻雲や巻積雲を地上から見上げた際、線路が奥の一点に収束して見えるのと同じ原理で、平行な直線が放射状に広がっているように知覚されます。
3. 竜巻形地震雲(たつまきがたじしんうん)の正体
空に向かって垂直または斜めにねじれながら立ち昇る柱のような雲です。この画像の9割以上は、上空を通過した航空機が排出した「飛行機雲(航跡雲)」が風によって変形したものです。上空の強い横風や乱気流を受けると、直線だった飛行機雲がねじれ、夕日に照らされるとまるで煙や竜巻のように立ち上って見えます。また、夏場であれば積乱雲(かなとこ雲)周辺の局所的な上昇・下降気流による雲のちぎれであるケースがほとんどです。
4. 断層雲(だんそううん)の正体
空が定規で引いたように「真っ二つ」に分かれ、片側だけが分厚い雲に覆われ、もう片側が抜けるような青空になっている光景です。「地層のズレが空に投影された」とまことしやかに語られますが、正体は寒冷前線や温暖前線の明確な境目です。密度の異なる暖気と寒気がぶつかり合う境界線(前線面)が通過する際、層積雲や高層雲のエッジが鋭い境界線を描くため、このような劇的な明暗が生まれます。