ネット掲示板の5ちゃんねる、なかでも「なんJ(実況J板)」において、『アウトレイジ』は単なる観賞対象にとどまらない。日常会話の定型句として、あるいはスレッドのオチとして、作中の怒号が今なお猛烈な頻度で書き込まれている。「バカヤロー」「コノヤロー」といったシンプルな罵倒から、「なめてんのかコラ」「痛い思いさせてやるよ」「帰っていいぞ」といった威圧的なセリフまで、なんJ民の琴線に触れるフレーズの宝庫なのだ。
ネットでここまで評価が高まった最大の要因は、テンポの良さと「圧倒的な使い勝手の良さ」にある。陰惨になりがちな抗争劇でありながら、無駄な回想やセンチメンタリズムを徹底的に削ぎ落とした北野演出の切れ味。それが、短文で素早いレスポンスを求めるネット掲示板の空気感と恐ろしいほど合致した。一見すると過激な怒号の応酬が、掲示板の文脈においては最高のコメディとしても機能するという二重構造。これこそが、ネット住民を病みつきにさせ、長年にわたって熱狂的な支持を集め続ける最大の秘密と言える。