通常の健康診断や人間ドックで撮影される単純胸部X線(レントゲン)検査だけでは、軽度から中等度の気管支拡張症を発見することは極めて困難です。気管支の壁が薄く広がっているだけの初期段階では、レントゲン写真上では「少し肺の血管影が目立つ」「気管支炎の疑い」程度の所見にとどまり、見落とされてしまうケースが日常茶飯事だからです。
確定診断における最大の武器となるのが、薄いスライス厚で肺の微細構造を描出する高分解能CT(HRCT)です。気管支拡張症のCT画像診断において、放射線科医や呼吸器専門医が診断基準とする特徴的所見には確立された指標が存在します。
正常な肺では、気管支の直径はすぐ隣を走る肺動脈の直径とほぼ同じ比率(1対1)を保っています。しかし気管支拡張症の患者のCT画像では、気管支が異常に拡大し、動脈の何倍もの太さになって映し出されます。これを断面で見ると、大きな指輪(拡張した気管支)の上に小さな宝石(伴走する動脈)が乗っているように見えることから、医学界で「Signet ring sign(印環サイン)」と呼ばれます。また、気管支が末梢に向かっても細くならず円筒状に伸びる「Tram track sign(トラムトラックサイン)」や、拡張した気管支の袋に粘液が充満した嚢胞状パターンも典型的な所見です。
CT画像を撮像することで、肺のどの区域(中葉や舌区など)にどの程度の病変が広がっているのか、喀血の原因となりそうな血管怒張があるのかをミリ単位で把握できます。長引く湿性咳嗽や血痰があるにもかかわらず「レントゲンは異常なし」と言われ続けている場合、躊躇なくCT検査が可能な専門医療機関へ紹介状を依頼することが、遠回りを防ぐ確実な選択肢となります。