野原ひろしの声優交代劇が公になったのは、2016年8月のことでした。当時所属事務所およびテレビ朝日から発表された公式リリースによると、初代を務めていた藤原啓治さんが病気療養のために急遽休養に入ることが明かされ、日本中に大きな衝撃が走りました。
藤原啓治さんは1992年4月13日の第1話放送から24年間にわたり、野原ひろしというキャラクターに命を吹き込んできました。哀愁漂うサラリーマンの悲哀と、いざという時に家族を命がけで守る男らしさを見事に融合させた演技は、日本中の視聴者にとって「父親の声」そのものとして深く刷り込まれていたのです。
テレビアニメにおいて森川智之さんが初めてひろし役として登板したのは、2016年8月26日放送の「クレヨンしんちゃん ぶりぶりざえもん 復活の乱 おなら音頭で大爆笑スペシャル」でした。当初は「代演(ピンチヒッター)」という位置づけであり、制作陣もファンも藤原さんの体調回復と現場復帰を信じて待っていました。
しかし、闘病生活の末に藤原さんは2020年4月12日、食道がんのため55歳の若さで逝去されました。この悲報を受け、代演として真摯に役と向き合ってきた森川智之さんが、正式な2代目声優として野原ひろし役を永続的に引き継ぐこととなったのです。