本作の大きな魅力でありながら、同時に激しい拒絶反応を引き起こすのが、人間の悪意や弱さを一切手加減なしで抉り出すヘビーなエピソード群です。
なかでも読者の怒りと嫌悪感を極限まで逆撫でしたのが、3姉妹を捨てて別の女性のもとへ去った実父・誠二郎の再登場劇です。誠二郎は、家族を捨てた過去を悪びれることもなく、甘言と責任転嫁を弄して川本家の資産や住居を奪おうと画策します。この父親・誠二郎のクズっぷりは、フィクションの悪役というよりも、現実社会に実在する自己愛性パーソナリティやモラルハラスメントの加害者をそのままトレースしたかのようなリアリティに満ちていました。
相手の良心や罪悪感につけ込み、巧みに被害者面をして周囲を操作しようとする誠二郎の言動に対しては、「胸糞が悪すぎて途中で本を閉じた」「吐き気がして読み返せない」といった悲鳴が読者レビューに溢れ返りました。
また、中学校を舞台にしたひなたのいじめ編も同様です。いじめの主犯である高城めぐみたちの陰湿な手口、ことなかれ主義に終始する担任教師の無責任さ、そして傷つきながらも「私のした事はぜったいまちがってなんかない」と涙を流すひなたの姿は、多くの読者に自分自身の過去の古傷を抉り出すような精神的負荷を与えました。この徹底したリアリズムが、「鬱展開がつらい」「耐えられない」という忌避感を生む原因となっています。