アキレス腱を断裂した際、患者が最も切望する「自力で歩ける」という状態には、大きく分けて2つの段階が存在します。1つ目は「歩行用装具を装着した状態で、松葉杖を使わずに歩ける段階」、そして2つ目は「装具もすべて外し、自分の素足と靴だけで通常通り歩ける段階」です。
再生医療や運動器リハビリテーションを専門とするリペアセルクリニック東京院および大阪院が提示する臨床知見によると、アキレス腱断裂における装具なしでの歩行再開時期は、選択する治療法によって明確な時間差が生じます。切れた腱端を強固に直接縫合する手術療法を選択した場合、受傷から最短で約2ヶ月(8週前後)が装具なし歩行の目安となります。対して、ギプスや装具の角度調整によって腱自身の自然治癒力を促す保存療法を選択した場合、腱組織の癒合に時間を要するため、装具が完全に外れて歩行可能となるまでに約3ヶ月(10〜12週前後)を要します。自力歩行の獲得という初動においては、両者の間に約1ヶ月の差が生じる計算です。
では、腱が完全に元の強度を取り戻し、日常生活の制限が完全になくなる「全治期間」の観点ではどうでしょうか。アキレス腱断裂における完全治癒の目安は、手術・保存のいずれを選択しても一般的に全治6ヶ月程度が必要とされています。日常生活の歩行自体は2〜3ヶ月で取り戻せても、断裂した腱がコラーゲン線維の再構築を経て本来の引っ張り強度と柔軟性を再獲得するには、最低でも半年間の生体修復プロセスを経なければなりません。
歩行再開を焦るあまり、組織の修復ペースを無視して負荷をかければ、最も避けたい「腱の伸長治癒(腱が伸びた状態でくっつき、つま先立ちができなくなる現象)」や「再断裂」を引き起こす結果につながります。治療法ごとの回復スピードの差異を客観的に認識することが、安全な社会復帰への第一歩となります。