ひきこさんが他の怪物と一線を画すのは、怪物化するに至ったあまりにも救いのない凄惨な過去が詳細に語られている点です。
伝承によれば、彼女の本名は「森妃姫子(もり ひきこ)」。本来は勉強熱心で心優しい少女でしたが、少し大人びた容姿や成績の良さ、あるいは逆に少し内向的な性格であったことから、クラスメイトたちから陰湿かつ執拗ないじめのターゲットにされてしまいます。
いじめは次第にエスカレートし、肉体的な暴行や顔を傷つけられる暴力にまで発展。耐えかねた妃姫子は自宅に引きこもるようになりますが、家庭内でも理解を得られず孤立を深めていきます。精神と肉体が完全に崩壊した結果、彼女は「自分をいじめた者への復讐心」と「引きこもり」という言葉が歪んだ形で融合し、人間を辞めた怪異「ひきこさん」へと変貌を遂げました。
ネットの考察や民俗学的なアプローチでは、1990年代に深刻な社会問題となった「不登校・引きこもり」と「学校内いじめ」に対する子供たちの無意識の恐怖が具現化したものと分析されています。