読書メーターやSNS、文芸コミュニティにおける高村薫の評価・評判を検証すると、読者の反応には際立った二極化が見られます。
肯定派からは「一度その文体に引き込まれると、他のエンタメ小説が軽薄に思えてしまう」「警察内部の書類手続きから登場人物の吐息まで完璧に再現されている」という熱狂的な声が寄せられます。一方で、「人物関係が複雑で登場人物一覧を手放せない」「文章の密度が高すぎて読了に何週間もかかる」という挫折の声も少なくありません。
この「難解さ」の正体は、安易なカタルシスを排し、人間の不条理や解決不能な現実をそのまま紙上に定着させようとする高村薫の妥協なきリアリズムに起因しています。読者は単に「犯人が誰か」を知るためではなく、重厚な世界に没入し、自らの知性と感性を総動員する体験を求めてページをめくっているのです。