ネット上のQ&AサイトやSNSでは、発達の遅れに悩む保護者に対して「男の子は言葉が遅いのが普通」「小学校に入学すれば周りに刺激されて自然と集団行動ができるようになる」といった無責任な励ましが散見される。しかし、取材に応じた小児精神科医は、こうした根拠のない「様子見」こそが最も避けるべきリスクであると警鐘を鳴らす。
早期に適切な療育や関わり方を受けないまま小学校という規律の厳しい環境へ進むと、子どもは「なぜ自分だけ先生に叱られるのか」を理解できず、深刻な自己否定に陥る。これが学齢期における不登校、暴力、心身症といった「二次障害」を引き起こす温床となるのである。宝塚市の啓発資料が述べるように、「苦手なことがあっても、周囲の大人が特性を理解し、かかわり方を工夫することで子どもの様子は劇的に変わる」。様子見とは何もしないことではなく、特性に合わせた支援を試行錯誤しながら観察することを指す。
一方で、インターネット上の発達障害チェックリストを過信し、少しでも当てはまる項目があるだけで「うちの子は重度の障害なのではないか」と極度のパニックに陥る親の過剰反応も深刻化している。発達の道筋は直線的ではなく、ある時期に停滞した後に一気に伸びる波がある。チェックリストは確定診断を下すツールではなく、医療機関や専門窓口に現状を正確に伝えるための「メモ帳」として使うのが本来のあり方である。