世界遺産の全体像を正確に把握するためには、文化遺産・自然遺産・複合遺産の内訳に目を向ける必要があります。世界遺産全体における登録基準(全10項目)のうち、基準(i)から(vi)は文化遺産、基準(vii)から(x)は自然遺産に適用されますが、上位国の保有バランスには顕著な特徴が現れています。
イタリアの世界遺産一覧を精査すると、60件中54件が文化遺産であり、自然遺産は6件にとどまります。ドイツやスペインも同様に、登録物件の8〜9割を文化遺産が占める「文化遺産偏重型」の構成です。これに対し、中国は59件中、文化遺産が40件、自然遺産が15件、双方の要素を満たす複合遺産が4件と、非常にバランスの取れた内訳を誇ります。
ヨーロッパ勢が長年にわたりランキング上位を独占してきた背景には、石造建築を中心とするヨーロッパの保存基準が、制度設計段階のユネスコにおいて標準モデルとされてきた経緯があります。木造建築や未踏の自然環境を主とする非西洋圏の遺産は、かつて登録基準のハードルに阻まれる時期が続きました。現在はこの地域間格差を是正するため、自然遺産や未代表地域の推薦を優先する動きが強まっています。