消防司令の真骨頂は、情報の混乱の中で最善の選択を下す「現場指揮権」にある。119番通報が入ると、指令室の大型モニターには瞬時に位置情報や周辺の道路状況が表示される。しかし、データだけでは把握しきれないのが現場の生きた空気だ。通報者の息遣い、バックで鳴り響く異音、風向き。消防司令は微細な違和感を察知し、ポンプ隊、救助隊、救急隊の編成を即座に判断する。
現場に到着すれば、消防司令は指揮本部(CP)のトップとして全隊員を統率する。木造住宅の密集地で起きた火災、あるいは高速道路での多重事故。一刻を争うレスキュー活動において、「進入可否」「撤退ライン」を決めるのは指揮官の知性だ。二次災害の危険と隣り合わせのなか、部隊を死地に追いやることなく、傷病者を助け出す。その責任の重さは想像を絶する。