日本全国で空き家や歴史的建造物の利活用が叫ばれるなか、AOI CAFEの試みは建築・デザイン関係者からも熱い注目を浴びている。築80年を超える邸宅の骨格をそのまま生かし、現代的なミニマリズムのディテールを巧みに融合させた古民家リノベーションカフェの佇まいは、足を踏み入れた者だけが味わえる圧倒的な没入感を持つ。
かつて一世を風靡したサードウェーブコーヒーの波は、機能美やインダストリアルな空間を好む傾向が強かった。しかし、この店舗が提示するのはその先にある日本独自の喫茶美学だ。職人が手作業で削り出した一枚板のカウンターに腰を下ろすと、手入れされた日本庭園の苔と飛び石が視界に広がる。時の流れを物理的にスローダウンさせるような建築設計が、訪れる者の心を掴んで離さない。