全国ツアーの発表時にファンを落胆させる現象が、いわゆる「札幌飛ばし」です。東名阪福の4大ドームまではスケジュールに組み込まれながら、なぜ北海道だけが除外されるのか。その背景には、興行ビジネスのシビアな損益分岐点と物理的制約が絡み合っています。
大手コンサートプロモーターの試算によると、ドームツアー 採算ラインは1公演あたり「動員率85%以上」がひとつの目安とされています。巨大なLEDモニター、フライング装置、照明トラス、特殊効果機材を組み上げるドーム公演では、設営と撤収を含めて1会場あたり数千万円から1億円超の会場使用料・付帯設備費が発生します。これに数百人規模のツアー帯同スタッフの人件費と宿泊費が加算されます。
札幌公演が敬遠される最大の構造的要因は、機材の海上輸送コストと移動スケジュールです。本州から大型11トントラックを何十台もフェリーで津軽海峡を越えて運ぶ必要があり、輸送日数だけで往復数日を奪われます。特に物流業界の労働規制強化以降、長距離トラックの確保難と燃料費高騰が興行主の予算を直撃しています。
加えて、北海道の人口規模(道内全域で約500万人、札幌都市圏で約230万人)を鑑みると、5万人規模の会場を地元ファンだけで埋め尽くすのは容易ではありません。本州からの「遠征組」が飛行機とホテルを押さえて大挙来訪しなければ満員には届かず、冬季の降雪による航空便欠航リスクや宿泊費の相場急騰がファンの足を鈍らせる要因となっています。赤字リスクを極小化しようとする興行側のビジネス判断が、「札幌飛ばし」を生む根本的なメカニズムです。