タマの歴史を遡ると、最初はアニメや漫画のキャラクターとして企画されたわけではありませんでした。生みの親は、数々の人気キャラクタービジネスを手がけてきたソニー・クリエイティブプロダクツです。
1980年代前半、日本のファンシーグッズ市場は空前の活況を呈していました。サンリオをはじめとする可愛らしい動物キャラクターが文具店に溢れかえるなか、開発チームはある大胆な着想を得ます。それが、町中の電柱や掲示板で見かける「飼い猫を探す手書きの貼り紙」でした。
「うちのタマ知りませんか?」という手書き風の問いかけと、特徴を記したシンプルなイラスト。あらかじめキャラクターの物語を提示するのではなく、「飼い主から迷子として探されている」という物語の導入部分そのものを商品デザインに落とし込んだのです。このリアリティと哀愁を帯びたアプローチは、当時の女子小中学生を中心に強烈な好奇心と愛着を呼び起こしました。
従来のファンシーキャラクターが「完成された理想の可愛さ」を売りにしていたのに対し、タマは「どこか抜けていて、守ってあげたくなる近所の飼い猫」という距離の近さを武器にしました。文房具から始まったブームは瞬く間に広がり、絵本や企業のマスコット、そしてテレビアニメ化へと発展していくことになります。