本作に魅了されたファンが必ず直面するのが、「なぜこれほどの傑作でありながら、日本版の公式DVDやBlu-rayが発売されないのか」という長年の疑問です。ネット上では「キャストの事務所NGではないか」「過激な描写がコンプライアンスに抵触するのではないか」といった様々な憶測が飛び交っていますが、取材関係者や舞台ビジネスの構造から見えてくる現実はまったく異なります。
最大の要因は、海外の権利元(ブロードウェイのライセンサーおよび音楽出版元)が保持するグランドライツ(上演権・複製権)の極めて厳格な契約制限にあります。欧米の大型ミュージカル作品は、世界各国での再演ツアーやブロードウェイ・ウエストエンドでの再上演価値を保護するため、ローカルプロダクションによる全編の映像商品化を原則として禁じているケースが少なくありません。
映像を一度パッケージ化して全世界に流通させてしまうと、将来の上演価値を毀損するリスクがあると判断されるためです。日本国内の制作会社であるホリプロや東宝がどれほど映像化を熱望したとしても、莫大な許諾料やグローバルな権利調整の壁が立ちはだかります。皮肉にもこの「劇場でしか観られない」という制約こそが、作品の希少価値を跳ね上げ、熱狂的なリピーターを生み出す土壌となっている側面は否定できません。