静岡おでんは、一般的な関東炊きや関西風の澄んだおでんとは外見も調理法も大きく異なります。「静岡ご当地グルメ」としての歴史は大正時代に遡り、当時廃棄されていた牛すじや豚モツを煮込みの具材として活用したことがルーツとされています。
静岡おでんの五大原則として定義されている特徴は以下の通りです。
第一に、真っ黒な煮込みスープです。牛すじベースの出汁に濃口醤油を継ぎ足し続け、脂の旨味とコクが凝縮されています。見た目の黒さに反して塩分過多ではなく、驚くほどまろやかな後味が特徴です。
第二に、すべての具材が竹串に刺さっていること。これは戦後の屋台において、勘定の際に串の本数を数えて会計していた名残です。
第三に、黒はんぺんの存在です。焼津港などの近隣漁港で水揚げされたサバやアジを骨ごとすり身にして加工するため、独特の灰色を帯び、魚の濃厚な旨味とカルシウムがそのまま凝縮されています。
第四に、「だし粉」と「青のり」をふりかけて食べる独特のスタイルです。イワシやサバの削り粉(だし粉)と香り高い青のりを合わせることで、濃厚な醤油出汁に魚介の芳醇な風味が重なり、味の立体感が一気に増します。
第五に、子どもから大人まで親しまれる駄菓子屋文化との結びつきです。静岡市内では現在でも、駄菓子屋の店先に大きなおでん鍋が置かれ、おやつ感覚で食べられています。居酒屋街としてのおでん街は、この食文化が酒場へと昇華した形態です。