一口に配位子と言っても、中心金属と手を結ぶ結合箇所の数によって配位子の種類は大きく二分されます。構造を理解する上で外せない分類が「単座配位子」と「多座配位子」です。
まず単座配位子は、1分子または1イオンの中に配位結合に関わる非共有電子対が1箇所しかないものを指します。アンモニア分子($\mathrm{NH_3}$)の窒素原子や、水分子($\mathrm{H_2O}$)の酸素原子、塩化物イオン($\mathrm{Cl^-}$)などがその代表格です。
一方、1つの分子内に複数の配位部位を持ち、中心金属をカニのハサミのように挟み込むものを多座配位子、あるいはキレート配位子と呼びます。ギリシャ語で「ハサミ」を意味する「chele」に由来し、結合の安定性が極めて高い点が特徴です。
代表的な配位子の性質を一覧で整理すると以下のようになります。
【主な配位子一覧と特徴】
・アンモニア($\mathrm{NH_3}$):単座配位子。錯体中の名称は「アンミン」。中性分子。
・水($\mathrm{H_2O}$):単座配位子。錯体中の名称は「アクア」。水溶液中では極めて普遍的。
・塩化物イオン($\mathrm{Cl^-}$):単座配位子。錯体中の名称は「クロリド」。陰イオン配位子。
・シアン化物イオン($\mathrm{CN^-}$):単座配位子。錯体中の名称は「シアニド」。非常に強い結合力を持つ。
・エチレンジアミン($\mathrm{en}$):2座配位子。2つのアミノ基で1つの金属イオンを固定する代表的キレート剤。
・エチレンジアミン四酢酸($\mathrm{EDTA}$):6座配位子。金属イオンを完全に包み込み、微量金属の定量分析や解毒剤として活躍。
キレート配位子が形成する錯体は「キレート効果」と呼ばれる熱力学的なエントロピー増大効果により、単座配位子に比べて解離しにくく、並外れた安定度定数を示します。