ファンの間で今なお語り草となっているのが、劇場版第1作『機動警察パトレイバー the Movie』における後藤喜一隊長の佇まいだ。緊迫したサスペンスが進行する裏で、後藤喜一がふらりと立ち寄る立ち食いそば屋のシーンは、息をのむほど印象的である。
つゆにひたったコロッケの衣が少しずつ崩れ、濃い口の醤油スープに溶け出していく。後藤隊長が割り箸を割り、静かに麺をたぐる一連の所作には、嵐の前の静けさとでも呼ぶべき独特の緊張感が漂う。セリフを極限まで削ぎ落とし、麺をすする音と丼から立ち上る湯気だけでキャラクターの心情と情勢の怪しさを表現する手腕は、まさに映画的演出の極致といえるだろう。