緑の木立を縫うように走る江ノ島電鉄のガタゴトという走行音は、日常を心地よく解きほぐしてくれる。極楽寺や長谷の駅を降りて線路沿いの小道を辿ると、是枝裕和監督の映画『海街diary』で描かれたような、生活の匂いと温もりが残る情景に出くわす。
小さな定食屋の暖簾をくぐれば、ふっくらと揚がったアジフライや、香ばしく焼かれたトーストに釜揚げしらすを惜しげもなく散らした名物の一皿が湯気を立てている。観光地然としていない、素朴でありながら妥協のない手作りの味わい。飾らないもてなしと地元の人々の朗らかな会話が、旅人の心をじんわりと満たしていく。