デジタルデータは簡単に消え去る。だからこそ、実物資料が持つ重みは計り知れない。公益財団法人野球殿堂博物館のバックヤードでは、日々劣化と戦いながら、大正から昭和、平成を駆け抜けた資料の保存作業が地道に続けられている。破れかけたスコアブックの脱酸処理、皮革製品の温度管理、白黒写真のデジタルスキャン。そのすべてが職人技だ。
この徹底した取り組みこそが、日本のスポーツアーカイブ・歴史文化を根底で支える背骨にほかならない。名もなき審判員の着ていたプロテクター、スタンドで配られた古びたペナント。そうした「時代の生活臭」を残すことによって、日本社会がどのように野球を愛してきたかの輪郭がくっきりと保たれている。