秋の鳴く虫と一口に言っても、種によって音の周波数、リズム、活動する環境は千差万別です。日本国内の平地や住宅街周辺で一般的に観測される主要なコオロギ類と、しばしば混同されるスズムシの生態データを比較検証しました。
上記のコオロギの鳴き声の種類一覧を概観すると、それぞれの生息戦略が見えてきます。代表格であるエンマコオロギの鳴き声は、豊かな転音を伴う「コロコロリー」という風格ある調べが特徴で、鳴く虫の王様とも評されます。
一方、住宅街のコンクリートの隙間やエアコン室外機の下で鳴いている大半はツヅレサセコオロギやモリオカメコオロギです。ツヅレサセコオロギは途切れなく「リィ・リィ・リィ」と刻み続けるため、静寂を求める夜間には耳に付きやすい性質を持っています。前額部が左右に張り出したミツカドコオロギは、やや高音で硬質な「キョキョキョ」という連続音を響かせます。
また、スズムシとの鳴き声の違いに悩むケースも散見されます。スズムシは翅をほぼ垂直に高く持ち上げて大きく擦り合わせるため、ガラスを叩いたかのような澄んだ余韻(リーン・リーン)を残します。対してコオロギ類は翅の角度が低く、擦り合わせのピッチが速いため、音の輪郭が細かく刻まれる(コロコロ、リリリ)という決定的な差異があります。