SNSや医療相談掲示板を調査すると、「熱はとっくに下がったのに咳だけが止まらない」「市販の咳止めシロップを何本も飲んだが全く効かない」「咳をしすぎて肋骨にヒビが入ったかもしれない」といった切痛な告白が無数に見受けられます。臨床現場の問診でも、多くの患者が「市販の総合風邪薬を飲み続けているのに改善しない」と訴えて受診します。
なぜ風邪のあとの咳には一般的な咳止め薬が効かないのでしょうか。ここには明確な医学的理由が存在します。
市販されている一般的な総合感冒薬や咳止め薬の主成分は、延髄の咳中枢に作用して反射を抑える中枢性鎮咳薬(デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物やジヒドロコデインリン酸塩など)です。しかし、風邪の後に生じている咳の本体は、中枢の異常興奮ではなく「気道末梢の局所的な炎症」や「アレルギー性の好酸球性炎症」です。火元が気道粘膜にあるにもかかわらず、脳の受容体を麻痺させようとしても、激しい局所刺激には太刀打ちできません。
さらに危険な落とし穴は、市販の風邪薬に多く含まれる第一世代抗ヒスタミン薬の抗コリン作用です。抗コリン作用は鼻水を止める一方で、気道分泌液を乾燥させて痰の粘り気を高めてしまう副作用があります。結果として、粘膜にへばりついた痰を排出しようと体が余計に激しく咳き込むという、本末転倒の悪循環に陥るケースが多発しているのです。風邪のあとの咳市販薬おすすめとして漢方の麦門冬湯(ばくもんどうとう)などが気道湿潤作用から選ばれる場面はありますが、自己判断で強い中枢性咳止めを連用することは根本解決にならないばかりか、診断を遅らせる要因になります。