『スーホの白い馬』と馬頭琴の真実|愛馬の骨で作られた伝説の深層

『スーホの白い馬』と馬頭琴の真実|愛馬の骨で作られた伝説の深層

『スーホの白い馬』と馬頭琴の真実|愛馬の骨で作られた伝説の深層の総合ガイドをお届けします。役立つ情報が詰まっています。

一般に『スーホの白い馬』として知られるエピソードは、中国の内モンゴル自治区チャハル地方で採集された民話がベースになっています。一方で、モンゴル国(外モンゴル)において最も広く共有されている馬頭琴の起源伝説は、「フフー・ナムジル(緑色の翼を持つ名馬)」と呼ばれる全く別の物語です。両者を比較することで、作品が持つ文学的・文化的特異性が浮き彫りになります。

比較項目日本で有名な『スーホの白い馬』モンゴル国の代表的伝説『フフー・ナムジル』編集部の分析・評価発祥・採集地域中国・内モンゴル自治区(チャハル地方)モンゴル国全土(特に西部・中央部)同一民族でありながら、東西の地域差や歴史的背景が物語の筋立てに色濃く反映されている。馬の能力・特徴現実的な駿馬(足が速く、オオカミを撃退する忠誠心)翼を持つ神話的な有翼馬(夜空を飛翔し千里を駆ける)スーホ版はリアリズムと人間ドラマが前面に出ており、情操教育に適した構成。愛馬の死因・敵対者強欲な封建領主(殿様)の命令による矢殺嫉妬に狂った人間の女性により翼を切り落とされ墜落死スーホ版は権力者への怒りと身分差別の不条理が際立ち、民話採集当時の階級闘争的解釈も含まれる。楽器製作の動機夢枕に立った白馬自身の遺言・共生への願いナムジル自身の深い後悔、愛馬の面影を永遠に忘れないための追悼どちらも「失われた愛馬の身体を楽器にして魂を呼び戻す」という核となるアニミズム思想は完全に共通。初版・定着時期1967年(福音館書店/絵本出版)口承文芸として数百年以上前から定着日本では大塚・赤羽両氏の絵本が絶大な影響力を持ち、日本人の共通認識となった。

このように、「馬頭琴の由来伝説」には複数のバリエーションが存在します。しかし、いずれの物語においても「最愛の馬を非業の死で失った男性が、その遺骸を用いて楽器を作り、音楽によって愛馬の魂を蘇らせる」という基本構造は揺らいでいません。これこそが、モンゴルという大地で何千年にもわたり馬と共に生きてきた人々の魂の叫びなのです。

前田 葵
著者

前田 葵

マーケティングと消費者心理のトレンドを分析し、現代のヒット商品の背景を読み解きます。