洗浄液の中に長時間衣類を沈め続ける最大の落とし穴が、逆汚染の危険性とデメリットです。逆汚染とは、洗剤の界面活性剤によって一度は繊維から剥ぎ取られ、水中に分散していた微細な汚れや油滴が、時間の経過とともに界面活性剤の乳化力を失い、再び衣類に吸着してしまう現象を指します。
界面活性剤分子は汚れを包み込む「ミセル」と呼ばれるカプセル構造を形成して水中に留まりますが、溶液の温度が低下し、浸漬時間が3〜4時間を超えてくると、その熱力学的平衡が崩れ始めます。遊離した汚れの粒子は、元あった場所だけでなく衣類全体に均一に再沈着するため、「洗う前よりも全体が薄汚れてグレーにくすむ」という不可逆な白度低下を引き起こします。
さらに見過ごせないのが、つけ置き洗い一晩放置の真相に潜む微生物リスクです。40℃前後の快適なぬるま湯は、室温環境で一晩(7〜8時間)放置されると、雑菌が最も好む25℃〜30℃前後の温度帯へと徐々に下がっていきます。洗剤に含まれる界面活性剤には一定の抗菌性があるものの、皮脂汚れがたっぷり溶け出したぬるま湯は、時間が経つにつれて菌の格好の培地へと変貌します。
特に部屋干し臭の元凶である「モラクセラ菌」や黄色ブドウ球菌は、漂白剤の酸化力が切れた数時間後から爆発的に増殖を開始します。「汚れを落として除菌するはずが、一晩かけて菌の培養液に衣類を浸していた」という事態は、科学的には日常茶飯事として発生しているのです。これに加え、長時間の強アルカリ・酸化環境は綿のセルロース繊維をボロボロにし、金属製ファスナーの腐食やボタンの変色、ポリウレタン混紡生地の伸縮性喪失を決定づけます。