完全試合の歴史を語る上で欠かせないのが、平成と令和を代表する2つの劇的なゲームです。この2試合には、対照的な投球スタイルと、語り継がれる人間味あふれるエピソードが存在します。
1994年5月18日、福岡ドーム(現みずほPayPayドーム福岡)で行われた読売ジャイアンツ対広島東洋カープ戦。巨人の槙原寛己投手が成し遂げた記録は、結果として「平成30年間で唯一の完全試合」となりました。当時の手記やドキュメンタリー番組のインタビューにおいて、槙原投手は「試合前のブルペンでは調子が最悪で、コーチから『今日は適当なところで交代だな』と言われていた」と回顧しています。立ち上がりの不調を察した長嶋茂雄監督やバッテリーを組む村田真一捕手は、球威に頼らず変化球を低めに集める冷静な配球へと舵を切りました。9回裏、最後の打者を一塁ゴロに打ち取った瞬間、槙原投手が両手を突き上げて歓喜したシーンは、プロ野球史に残る屈指のハイライトです。
それから28年の歳月が流れた2022年4月10日、ZOZOマリンスタジアム。千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手がオリックス・バファローズを相手に演じた投球は、球界の常識を根底から覆すものでした。160km/hを超える剛速球とホームベース手前で消えるように落ちるフォークボールを武器に、NPB新記録となる13者連続奪三振、プロ野球タイ記録となる1試合19奪三振をマーク。内野安打の打球すら許さず、外野へのライナー性の当たりも極端に少ないまま、わずか105球で27人を完璧に封じ込めました。高卒2年目、当時20歳5カ月という史上最年少での達成であり、バッテリーを組んだのが高卒ドラフト1位ルーキーの松川友明捕手であった点も、日本中に大きな衝撃を与えました。