だが、極端な振り子は必ず逆へと揺り戻す。東京・裏渋谷の先鋭的なナチュラルワインバーや、京都の気鋭のレストランでは、甘さ一辺倒の潮流に対する明確な反逆が始まっている。テーブルに並ぶのは、あえて完熟させずに収穫した未熟果のピクルスや、野性の酸味が舌を刺す山葡萄のソースだ。
「誰もが均一な甘さに飽き始めている」と語る30代のシェフは、契約農家から規格外として廃棄されるはずだった酸味の強い果実を買い取っている。「甘さは一口目で人を感動させますが、三口目で退屈させる。私たちが取り戻すべきなのは、料理を最後まで食べ進めるための緊張感とリズムです」。平坦な幸福感に対する違和感が、感度の高い層から静かに、だが確実に広がりを見せている。