戸隠そばのルーツを探ると、古代の山岳修験に行き着く。平安時代以前、修験道の開祖とされる役小角の影響を受けた修験者たちが、山中での修行中に持ち歩いた携帯食(そば粉)がその始まりと伝えられている。
当時、蕎麦は現在のような麺状ではなく、水や湯で練った「そば餅」や「そばきり」に近い形で食されていた。厳しく過酷な修行に耐える山伏たちの貴重な栄養源だったのだ。この質実剛健な食文化が時代を経て洗練され、やがて日本の代表的な和食・伝統郷土料理へと昇華を遂げた。一枚のざるに盛られた蕎麦には、千年以上続く修験者たちの祈りと自然信仰の歴史が宿っている。