結婚からわずか数年後の2017年、ふたりを過酷な試練が襲う。中村獅童を襲った初期の肺腺がんの発覚だ。歌舞伎界の第一線で走り続ける俳優にとって、舞台に立てなくなる恐怖と生命の危機は計り知れない絶望であった。
そのとき、取り乱す夫の手を握り、「大丈夫、絶対に治るから」と誰よりも力強く前を向いたのが沙織さんだった。彼女は病院への付き添いはもちろん、医師からの説明の記録、徹底した食事管理や生活習慣の改善を率先して担った。夫の弱音をすべて受け止め、不安を決して外に見せないその献身ぶりは、主治医や周囲の関係者を驚嘆させたという。
早期発見と沙織さんの徹底したサポートが実を結び、獅童は見事に病を克服して舞台への復帰を果たす。退団や引退の二文字すら脳裏をよぎった暗闇のなかで、沙織さんが灯した希望の光こそが、現在の獅童の力強い芝居を形作っている。