なぜ、氷見の魚はこれほどまでに旨いのか。その答えは、背後にそびえる立山連峰から注ぎ込む豊富なミネラルと、「天然の生け簀」と称される富山湾の独特な海底地形にある。岸からわずか数キロで急激に深くなるこの海では、400年以上前から受け継がれてきた「越中式定置網漁」が主役を張る。
魚を根こそぎ捕獲する底引き網とは根本的に異なり、回遊してくる魚の約3割だけを網に誘い込み、残りの7割は自然へと逃がす。水産庁が推進する資源管理型漁業の理想形が、ここでは何百年も前から当たり前の日常として機能してきた。網を揚げる場所から港までの距離が圧倒的に近いため、生きたままの鮮度で水揚げできる。持続可能な水産業のモデルケースとして、国内外の研究者がこの港に熱烈な視線を送る理由がここにある。