「2,000円台で焼肉食べ放題」といった極端な低価格を打ち出す看板に惹かれ、入店後に深い落胆を味わったという失敗談は枚挙にいとまがありません。飲食業界の原価構造を紐解くと、肉の仕入れ値、新宿の超一等地におけるテナント料、そして人件費を差し引けば、極端な低価格食べ放題で上質な正肉を提供することは物理的に不可能です。安さの裏側に潜む「3大トラップ」を客観的に把握しておく必要があります。
第1のトラップは、過剰な脂身と成型肉・結着肉の多用です。低価格プランで提供されるカルビの多くは、牛脂を注入した加工肉や、トリミング(脂落とし)を省いた脂身だらけの端材肉であることが少なくありません。網の上に乗せると炎が上がり、焼き上がると縮んで油の味しか残らないといった現象は、原価を極限まで抑えるための必然的な結果です。
第2のトラップは、「ファーストプレート(強制盛り合わせ)」による満腹誘導です。注文した肉が届く前に、大量のキャベツや山盛りの豚ホルモン、ソーセージなどが自動的に配膳され、「これを完食しないと追加注文を受け付けない」というルールを課す店舗が存在します。利用者が本当に食べたいカルビやロースにたどり着く頃には胃袋の許容量をオーバーしてしまう仕掛けです。
第3のトラップは、配膳タイムラグによる「ロスタイム商法」です。制限時間90分(ラストオーダー70分)と謳いながら、タブレットで注文した肉が15分以上届かない、あるいはアルコールの提供が滞るといったオペレーション不全です。現場観察によれば、フロアスタッフが極端に少ない店舗では注文の滞留が意図的・非意図的に発生し、実質的な喫食時間が大幅に削られる結果となります。