「きんは100歳100歳、ぎんも100歳100歳」——1992年に放送されたダスキンのテレビCMは、お茶の間に強烈なインパクトを与え、同年の新語・流行語大賞の年間大賞に選ばれました。一躍時代の寵児となった成田きん(姉)と蟹江ぎん(妹)ですが、その素顔は明治の激動期を泥臭く生き抜いた、極めて芯の強い女性たちでした。
2人は1892年(明治25年)8月1日、愛知県愛知郡鳴海町(現在の名古屋市緑区鳴海町)の農家に生まれました。幼少期から農作業に明け暮れ、姉のきんさんは成田家へ、妹のぎんさんは蟹江家へとそれぞれ嫁ぎます。きんさんは11人、ぎんさんは5人の子を出産し、貧しい時代に女手一つで田畑を耕し、家族の命を支え続けました。
脚光を浴びたのは1991年、数え年で100歳を迎えた際に愛知県知事や名古屋市長から長寿の表彰を受けたことが発端です。当時の新聞報道を機にテレビ局が殺到し、前述のダスキンCM出演へとつながりました。当時100歳を超えた高齢者が商業広告で主役を張る前例はほとんどなく、日本の高齢者観を根底から覆す契機となったのです。