テレビ時代劇『遠山の金さん』のエンディングとして世に出た『すきま風』。だが、当初からこれほど内省的で叙情的な楽曲が想定されていたわけではなかった。勧善懲悪の痛快劇の後に、なぜあえて人間の弱さや孤独に寄り添うバラードが選ばれたのか。
その背景には、主役を務めた杉良太郎自身の強い美学があった。お白洲で悪を裁く金四郎も、桜吹雪の刺青を隠せば一人の不完全な男に過ぎない。裁かれる側の悲哀や、救いきれなかった弱者へのやるせなさを背負って夜風に消えていく——。その哀愁を表現するために、勝者の凱歌ではなく、心に吹く「すきま風」を温め合う歌が必要だったのだ。
「人に言えない 寂しさを 抱いて誰もが 生きている」という一節には、厳しい現実を生きる市井の人々へ向けた、杉良太郎の祈りにも似た眼差しが込められている。この真意こそが、時代を超えて胸を打つ理由に他ならない。