ネット上の口コミやSNSで頻繁に見かけるのが、「ニュートンのリンゴを食べてみたら激マズだった」「酸っぱすぎて歯が浮く」という評判です。この評価は単なる悪評ではなく、品種の特性から来る客観的事実と言えます。
ニュートンの木の実の品種名は「フラワー・オブ・ケント(Flower of Kent)」と呼ばれます。15世紀から17世紀の英国ケント州で栽培されていたとされる非常に古い西洋リンゴの品種です。現代日本のスーパーに並ぶ「ふじ」や「シナノスイート」といった品種は、糖度が14〜16度前後あり、酸味とのバランスやジューシーな果肉が生食専用に品種改良されています。対照的に、フラワー・オブ・ケントは純粋な「クッキングアップル(加熱調理用リンゴ)」です。
果実は洋ナシに似たややゴツゴツとした扁円形で、成熟しても全体が鮮やかに赤く染まることはなく、緑色の地肌に不揃いな赤茶色の筋が入ります。その最大の特徴は、極めて強烈な酸味と渋み(タンニン)、そして粗くパサついた果肉の繊維質です。生で口に含むと、強い酸っぱさが舌を直撃し、果汁の甘みはほとんど感じられません。まさに「生食には適さない」という表現が正確です。
ただし、加熱調理を施すことで評価は一変します。豊富なペクチンと鋭い酸味を持つため、砂糖やシナモンを加えてパイやタルトに焼き上げたり、煮崩してジャム(アップルソース)に仕立てたりすると、現代の生食用品種では出せない芳醇な風味ととろみを発揮します。17世紀の英国家庭において重宝された理由もそこにありました。
なお、実が木から自然に落下する時期は例年9月下旬から10月中旬にかけてです。台風や秋風の強まりとともにボトボトと芝生の上に落ちる姿は、今なお万有引力の法則をリアルタイムで物語っています。